機能性表示食品の買上調査結果を全面開示、その背景とは?
消費者団体関係者A氏が国を相手取って、機能性表示食品の調査事業報告書の全面開示を求めた訴訟は、2025年6月6日の最高裁判決を受けて、事実上、原告側が勝訴した。判決を踏まえ、消費者庁は調査事業報告書の詳細を開示するとともに、毎年実施する機能性表示食品の買上調査の結果も全面開示すると決定した。その背景と経緯を見ていく。
事業者に推知される恐れの有無
機能性表示食品制度は2015年4月に施行。制度の運用状況を確認するため、消費者庁は事業者が届け出た関与成分の分析方法を精査するとともに、買上調査を実施。その結果を調査事業報告書として取りまとめ、16年5月に概要を公表した。一部の商品で関与成分の含有量が表示値を下回るなど、いくつかの問題点が報告されたものの、事業者名や商品名といった詳細は非開示の扱いだった。
概要しか公表されないことにA氏は疑問を持ち、2018年2月27日、報告書の開示を求めて東京地裁へ提訴した。一審・二審とも、原告側の主張を一部認めたものの、国が勝訴する形となった。
情報公開法は原則、情報を開示するという考え方を示している。ただし、開示することで、法人・個人の権利や正当な利益を害する恐れがある場合は、非開示の扱いが可能と規定。国の業務に支障を及ぼし得るものとして、監査や取り締まりで正確な事実の把握を困難にする恐れのあるもの、違法・不当な行為を容易にする恐れのあるものを挙げている。
二審は非開示の情報を公表すると、機能性表示食品の届出ガイドライン(当時)のどの部分を中心に監視するのか、関与成分の含有量が表示値よりもどのくらい過剰・過少だと問題になるかなどが、事業者に推知されることを問題視した。推知されると、事業者は国の指摘を免れやすくなるとの考え方を示した。
二審判決を不服とした原告側は上告し、最高裁は2025年6月6日、原判決を破棄し、高裁へ差し戻すと判断した。調査事業について届出ガイドラインのどの部分を中心に検証するのかという具体的な指示の記録がなく、二審判決で示された<事業者に推知される恐れ>があると直ちに言えないと結論づけた。
最高裁判決を踏まえて、消費者庁は差し戻し審を待たずに、2025年9月9日、ホームページ上で調査事業報告書を全面開示した。これにより、原告側はその翌月に訴えを取り下げ、約7年間に及んだ裁判は終結した。
商品名や事業者名、分析結果など公表
最高裁判決は、消費者庁が毎年実施する機能性表示食品の買上調査にも影響を及ぼした。消費者庁の堀井奈津子長官は2025年9月11日に開かれた記者会見で、買上調査の結果についても全面開示する方針を明らかにした。過去に実施した買上調査については、既に結果の詳細を公表している。
開示された2024年度買上調査の詳細を見ると、1商品で関与成分がほとんど含有されていなかった。表示値の4.8mgに対し、分析値は0.26mgだった。消費者庁のホームページには、具体的な商品名や事業者名、分析機関名なども公表されている。
消費者庁は2025年度に、従来の10倍に当たる1,000品目を買い上げて、関与成分の含有量などを分析する計画。紅麹問題を受けて、調査対象の品目数を大幅に増加させて実施する。関与成分の含有量が表示値を下回った商品については、その詳細が公表される。
消費者にとっては問題を抱える商品がわかり、商品選択に役立てることが可能となる。一方、事業者にとっては、いっそうの製造・品質管理の徹底が求められそうだ。
(了)
【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】
