“ナンバーワン表示”景品表示法上の留意点とは?
「顧客満足度 第1位」「アフターサービス№1」といったナンバーワン表示が不適切であったため、景品表示法違反に問われるケースが増加している。広告にナンバーワン表示を掲載する場合、どのような点に注意する必要があるのだろうか?過去の違反事例と、消費者庁が2024年9月26日に公表した「№1表示に関する実態調査報告書」を基に解説する。
違反事例ではイメージ調査を実施
消費者庁の「№1表示に関する実態調査報告書」によると、一般消費者1000人を対象にナンバーワン表示が商品購入に及ぼす影響を聞いたところ、「かなり影響する」「やや影響する」を合わせて約5割に上った。このように、ナンバーワン表示は事業者にとって魅力的な広告手法となっている。
ところが、“ナンバーワンありき”で調査を請け負うリサーチ会社もある。違反事例が増加している背景に、不適切な調査を行うリサーチ会社の存在がちらつく。
消費者庁ではナンバーワン表示について、2023年度中に9件・14事業者に対して景表法に基づく措置命令を出した。2024年2~3月には集中的に行政処分を行い、不適切なナンバーワン表示の一掃に乗り出した。
違反事例を通じて、調査手法をめぐる問題点が浮かび上がった。その1つに、イメージ調査と呼ばれる手法がある。これは、調査対象者(一般消費者)に広告主と競合他社のウェブサイトを見てもらい、それぞれの商品の印象を聞くというもの。「顧客満足度」などを調べる場合に、合理的な根拠とならないことから問題視された。
利用経験の確認なしに調査対象者を選定
違反事例からは、広告主の商品を比較対象リストのトップに記載するという誘導的な手法も確認されている。調査対象者はすべてのサイトを確認するのが面倒なことから、最初に出てくる商品をナンバーワンに選ぶ傾向がある。このため、広告主の商品が常に比較対象リストのトップに掲載されている場合には、競合品と比べて断然有利となる。
また、調査対象者の選択も不適切だったことがわかった。本来ならば、広告主や競合他社の商品を使用した経験の有無を確認した上で、調査対象者を選ばなければならない。しかし、リサーチ会社では、使用経験の有無を確認せずに、「満足度」や「アフターサービス」などについて質問していたわけである。
商品選定や調査方法などに留意
「顧客満足度 第1位」といった主観的な評価によるナンバーワン表示が違法とならないために、事業者はどのような点に注意すべきか。消費者庁の「№1表示に関する実態調査報告書」では、少なくとも次の4点を満たすことが必要と説明している。
(1)比較する商品・サービスを適切に選定していること
(2)調査対象者を適切に選定していること
(3)調査が公平な方法で実施されていること
(4)表示内容と調査結果が適切に対応していること
比較する商品・サービスの選定については、例えば、「〇〇サービス 満足度№1」と表示する場合、〇〇に属する同種のサービスのうち、主要なものの一部を比較対象に含めずに調査すると、景表法上の問題が生じる。
調査対象者は無作為に選定することが求められる。例えば、自社商品を継続して購入しているユーザーのみを選定したり、自社の関係者を選定したりした場合には問題となる。また、「顧客満足度」などは、実際に商品を利用した人でなければ判断できない。このため、利用経験がない人を調査対象者としたり、利用経験の有無を確認せずに調査対象者を選定したりすることは不適切となる。
調査方法については、調査内容の客観性が担保されるように、恣意性や調査対象者のバイアスを排除するなど、公正なものでなければならない。例えば、自社商品が1位になるまで調査を繰り返したり、1位になったタイミングで調査を終了したりした場合には、景表法上の問題が生じる。
打ち消し表示は通用しない
「顧客満足度」などの不適切なナンバーワン表示をうたうサイトでは、「本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています」「本ブランドの利用有無は聴取していません」などの打ち消し表示を記載しているケースもある。しかし、こうした打ち消し表示を掲載していても、表示内容と調査結果が適切に対応していないことに変わりなく、景表法上で問題となる。
(了)
【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】