大麻取締法と麻薬・向精神薬取締法の改正
改正された大麻取締法と麻薬・向精神薬取締法(麻向法)が2024年12月12日に施行された。これに伴って、CBD(カンナビジオール)を配合したサプリメントや化粧品などの関連製品の規制ルールも大きく変更された。製品中の有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の残留限度値を新設し、これを超えた製品は「麻薬」として取り締まることになった。
部位規制から成分規制へ転換
改正前は大麻取締法の下、大麻草の「種子」と「成熟した茎」に限定して食用に使用してきた(これを部位規制という)が、法改正によって、この部位規制を撤廃。製品中の有害物質であるTHCの残留限度値を新たに設け、麻向法に基づく成分規制へ移行した。
改正の方向性を検討した厚生労働省の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の報告書には、「大麻取締法においては、大麻草の部位による規制を行っているところであるが、実態としてはTHCという有害成分に着目して取り締まりを行っていることや、規制すべき物質は有害な精神作用を示すTHCであることから、大麻草が含有する成分(THC)に着目した規制に見直すことが適当である」と明記された。今回の改正は、そうした提言に沿ったものだ。
また、改正前の状況を見ると、大麻草由来のTHCは大麻取締法の規制対象だった一方で、化学合成のTHCについては麻向法の取り締まり対象となってきた。しかし、大麻草由来か化学合成かは、科学的な分析による判別が難しい状況にあった。
製品区分ごとにTHC残留限度値を設定
今回の法改正により、CBD製品に含まれるTHCの残留限度値を新設した。各製品区分の残留基準値は以下のとおり。
・10ppm:CBDオイル、ヘンプシードオイル、化粧オイルなどの油脂と、CBDパウダー、プロテインなどの粉末類。
・0.1ppm:清涼飲料水、アルコール飲料、化粧水などの水溶液と、牛乳などのコロイド溶液。
・1ppm:上記を除く「その他」として、菓子類、錠剤、バターなどの固形物や、電子タバコ、シャンプー、リンス、乳液、クリーム、マヨネーズ、ドレッシング、ゼリーなど。
製品区分は形状・成分で判断
製品区分については、食品や化粧品といった用途によって分けずに、製品の形状と成分によって判断される。厚労省の「製品区分に係る質疑応答」によると、ドレッシングのように油と水の2層に分かれる製品については、攪拌すると油と水が混和してエマルジョンの状態になるため、「その他」に該当する。
油脂については「グリセリンと脂肪酸が結合した化合物を90%以上含むもの」と定義している。例えば、CBDを溶かした植物油は、植物油とCBDの合算重量が全体の90%以上ならば油脂となる。
また、水よりもエタノールを多く含む酒は、エタノールに水が溶けているとみなされて、「その他」となる。
このほか、錠剤製品が運搬中に一部が粉砕し、固形物と粉末が混在した状態になった場合には、粉末も固形物の一部として判断される。
THC含有量の検査機関を公表
厚労省はホームページ上で、製品中のTHC含有量の検査が可能と申告した検査機関として、以下を掲載している。
【2024年12月11日時点】
・三重大学神事・産業・医療用大麻研究センター
・ネオサイエンス
・立命館大学薬学部 ダイセル ライフサイエンス製品営業部
・Anresco Laboratories
・Eurofins Food Chemistry Testing US Madison USA
・KCA Laboratories LLC
残留限度値超の製品は「麻薬」に
改正法が施行された2024年12月12日以降、残留限度値を超えたTHCを含むサプリメントや化粧品などの製品は、覚せい剤などと同様に麻向法で「麻薬」として位置づけられた。
残留限度値を超えた製品を取り扱った事業者は、麻向法違反に問われる。この場合、厚労省は立入検査を行って、行政措置や刑事対応に乗り出す。一方、残留限度値以下の製品については、従来どおり販売できる。(了)
【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】