アフィリエイト広告の留意点 景品表示法「指針」のポイントとは?

販売事業者の広告で問題となりやすいものの1つに、アフィリエイト広告がある。成果報酬型のため、広告を制作するアフィリエイターは誇大な表現になりがちで、一方、広告主も責任意識が希薄になりがちといった問題を抱えている。消費者庁は2022年6月に景品表示法の「指針」を改正し、規制を強めている。アフィリエイト広告を行う場合の留意点を解説する。

アフィリエイト広告のはずがステマに

アフィリエイト広告は、インターネット上で展開される成果報酬型の広告手法の1つ。広告主である販売事業者から依頼されたアフィリエイターは、広告を制作して、自身のブログやほかのサイトに掲載し、記載したリンクから広告主の販売サイトへ遷移させるという仕組みだ。

アフィリエイト広告の目立つ箇所に、「広告」「PR」といった文字が記載されていれば、消費者は事業者の広告であると理解できるが、そうでない場合には、第三者の客観的な意見・評価であるという誤認を生む(ステマに該当)。

このように、アフィリエイト広告でありながら事業者の広告であることを明らかにせずに、ステマを行う例が横行していたため、消費者庁はアフィリエイト広告の規制に乗り出している。

成果報酬型のため誇大な表現に

アフィリエイト広告の仕組みを見ると、広告主はASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)と呼ばれる事業者に依頼する。ASPとは、販売事業者の広告案件と、広告を制作するアフィリエイターをマッチングする会社のこと。

ASPでは、アフィリエイターを多数登録していて、広告主の依頼案件を紹介し、参加するアフィリエイターを募集する。参加が承認されたアフィリエイターは広告を制作し、自身が運営するサイトなどに掲載する。そして、広告主の販売サイトに遷移した場合などに、アフィリエイターに対して報酬が支払われる。

このように、アフィリエイト広告は成果報酬型となっているため、アフィリエイターが高い報酬額を求めて虚偽誇大広告を行うインセンティブが働きやすい。これに加えて、アフィリエイターが広告を作成・掲載するため、広告主による管理が行き届きにくいという問題もある。

景表法の「指針」を改正

消費者庁は2022年6月29日、アフィリエイト広告の規制を強化するため、景品表示法の指針「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」を改正した。指針では、販売事業者がアフィリエイト広告を行う場合の注意点を整理している。主なポイントを紹介する。

まず、アフィリエイト広告を依頼する際の留意点として、広告主はあらかじめアフィリエイターとの間で、不当表示を行わないよう法令順守の方針を明確にしておく。

アフィリエイターがこれに違反した場合、成果報酬の支払い停止や契約解除といった措置について、あらかじめアフィリエイターとの間で明確にしておくこともポイントとなる。

次に、不当表示を未然に防止する観点から、アフィリエイターが作成する表示内容を事前に確認する。マンパワーなどの問題で、すべての表示内容を事前確認することが困難な場合は、成果報酬の支払額が多いアフィリエイターなどの広告を重点的に確認するといった対策も有効だ。

これに加えて、表示内容の方針や表示の根拠となる情報について、アフィリエイターと事前に共有しておくことも押さえておきたい。

目立つように「広告」と表示

アフィリエイト広告で事業者の表示であることを明示することは、最も重要な取り組みの1つとなる。

広告主は、事業者の表示であることを消費者が認識できるように、アフィリエイト広告に事業者とアフィリエイターとの関係性がわかる表示を行うよう、アフィリエイターに求める。その際、「広告」など事業者の表示であることを認識しやすい文言を使用する。その上で、事業者名を記載することも有効な対策となる。「広告」などの表示は、最初のページの上部など、消費者が認識しやすい箇所に表示しなければならない。

表示・資料を保存

広告主には、アフィリエイト広告が掲載された後の対応も求められる。

アフィリエイト広告は一旦削除されると回復させることが困難なため、広告主が表示の保存も含め、根拠情報を事後的に確認するための資料を保管する。自社ですべての情報の保管が困難な場合、アフィリエイターが情報を保管することを明確にしておくことや、ASPに委託するといった対応を取る。また、アフィリエイターとのやり取り(メールやチャット)の内容なども保存しておく。

保存期間の例として、アフィリエイトリンクから広告主の商品を購入できなくなるまでの期間などが考えられる。

不当表示が生じた場合の対応も

広告主には、不当表示が明らかになった場合の対応も求められる。具体的な取り組みとして、次のようなものがある。

事実関係を確認するため、広告主は、商品・役務について消費者からの情報を収集する窓口を迅速に設置し、必要な期間継続する。ASPまたはアフィリエイターを通じて、迅速に不当表示を削除・修正できる体制を構築することも忘れてはならない。

アフィリエイターが契約内容に違反し、不当表示を生じさせた場合、契約で取り決めた成果報酬の支払い停止や契約解除を迅速に行うことも求められる。

(了)

【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】