「糖質カット炊飯器」 措置命令取消判決
東京地裁は、2025年7月、消費者庁が糖質カット炊飯器に関して行った景表法の措置命令(優良誤認)について、これを違法であるとして取り消す判決を下した。
消費者庁は、2023年10月、販売業者が広告で「美味しさそのまま」等を表示していたことについて、「あたかも通常の炊飯器で炊飯した米飯と同様の炊き上がりであるかのように表示していた」ものとして措置命令を行っていた。これを不服として販売業者が提訴したのが本件。
※措置命令の詳細は以下をご参考
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms215_231031_08.pdf
これに対し、東京地裁は、広告では、通常の炊飯と釜の構造が異なり、水分量を増やした蒸し工程があること等が示されており、「同様の炊き上がりになると認識するとは言えない」として、優良誤認表示の存在を否定し、措置命令を取り消す判断をした。景表法の措置命令が取り消されたのは初めてとなる。
本件は、広告の表示解釈が勝敗を分けた事案といえる。東京地裁は、広告から「通常炊飯と同様の炊き上がり」を直接示す文言や全体印象は読み取れないとして、優良誤認の前提自体を否定した。
「美味しさそのまま」等の表現は一般に主観的・抽象的で、物理的な炊き上がりの同一性を直ちに根拠づけないため、これを争点に据えざるを得なかったことが苦戦の一因かもしれない。
もっとも、一般消費者が表示全体から受ける印象という表示解釈が争点の中心であり、これは基準として決して明確ではないので、控訴審で結論が変わる可能性も排除できない。
なお、本判決は、対象商品の糖質カット機能の実効性自体を積極的に認めたものではない点は留意を要する。
※消費者庁はその後控訴した模様である。
【文責 堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】