特定商取引法と通信販売 通販事業者が押さえたいポイント(中編)

「通信販売」は特定商取引法(特商法)で規制されている。一般消費者が通販によって申し込む場合、広告を見て判断することから、規制内容の大半は広告に関するものとなっている。

通販の広告規制

通販を利用する一般消費者は事業者と直接会うことなく、広告を通じて商品・サービスを購入するかどうかを判断する。その判断に必要な情報が表示されていないと、トラブルの原因となる。

そこで特商法第11条では、以下のとおり、広告に表示する事項を定めている。ただし、広告スペースの制約によってすべてを表示できない場合は、以下の事項を記載した書面(ネット通販の場合は電子メールも可能)を遅滞なく提供することを広告に表示し、実施体制を整えていれば表示事項の一部を省略できる。

・販売価格(送料も必要)
・代金の支払時期・方法
・商品やサービスの引渡時期
・申し込み期間の定めがあるときはその旨と内容
・申し込みの撤回・解除に関する事項(返品特約がある場合はその内容も)
・事業者の氏名、住所、電話番号
・法人がインターネット広告を行う場合は、代表者または通販業務の責任者の氏名
・外国法人や外国に住所がある個人で国内に事務所を持つ場合、所在場所と電話番号
・販売価格、送料以外に購入者が負担すべき金銭がある場合はその内容と金額
・届いた商品の種類・品質が契約内容に適合しない場合の販売業者の責任について定めがある場合はその内容
・ソフトウェアに関する取引である場合は動作環境
・契約を2回以上継続して締結する必要がある場合はその旨と条件
・商品の販売数量の制限など特別な販売条件がある場合はその内容
・請求によりカタログ等を送付する場合、有料であるときはその金額
・電子メールによる広告を送る場合は、事業者のメールアドレス

失敗しがちな表示事項①
「販売価格」

通販事業者がミスしやすい表示事項の1つに、販売価格がある。

販売価格とは実売価格を指す。定価や希望小売価格が表示されていても、それと異なる価格で販売している場合は不適切となる。また、消費税を徴収する場合は、消費税を含む価格を意味する。

送料の表示も忘れてはならない。販売価格に送料が含まれていない場合は、送料を別途表示しなければならない。販売価格のみを表示した場合には、送料はその中に含まれているものと推定される。

送料を表示する場合は金額で表示する。「送料実費」などは不適切であり、購入者が負担する費用を明確にしなければならない。

一方、次のような送料の表示は適正とされている。
・全国一律の場合の「全国一律〇〇円」。
・全ての地域について表示する場合の「〇〇円(北海道)〇〇円(北東北)〇〇円(南東北)・・・〇〇円(沖縄)」。
・広告スペースが不足している場合、おおよその目途がわかる表示として、最高送料と最低送料、平均送料なども認められる。

失敗しがちな表示事項②
「代金の支払時期・方法」「商品の引渡時期」

代金の支払時期・方法、商品の引渡時期にも注意が必要である。

支払方法はすべて表示し、一部の支払方法しか記載しないことは認められていない。

支払時期については、金融機関やコンビニなどで手続きする場合、前払いか後払いかを明示し、いつまでに支払うか具体的な時期も表示する。

商品の引渡時期については、「入金確認後発送します」「銀行振込の確認後に商品を発送します」と表示しているだけでは不適切となる。期間・期限を明確にし、例えば「〇日以内」「〇月〇日まで」と表示する。また、「直ちに」「即時」など速やかに引き渡すことを意味する表現も可能とされているが、「入荷次第」は時期を示したことにならない。

失敗しがちな表示事項③
「申し込みの撤回または解除に関する事項」

申し込みの撤回・解除に関する事項は、条件・方法などを表示する。申し込み撤回の特約(返品特約)がある場合は、撤回を認めるか否か、その条件や送料負担の有無などを広告に明示することが必要となる。

定期購入契約で解約の申し出に期限がある場合はその期限も表示し、解約時に違約金(キャンセル料)が生じる場合はその旨と内容も表示する(定期購入契約の詳細は「後編」で解説)。

なお、特商法では、通販の申し込みの撤回・解除を妨げるために、撤回・解除に関する事項について事実と違うことの表示を禁止している。

返品特約について

通販にはクーリング・オフ制度がない。ただし、商品の引き渡し日から8日以内であれば、申し込みの撤回・解除ができる。その場合であっても、無条件で解約できるクーリング・オフとは異なり、返品時に購入者が送料を負担しなければならない。

一方、広告であらかじめ特約(返品特約)を明記していた場合(インターネット通販の場合は広告と最終確認画面の両方で明記した場合)は、特約に従う。

返品特約については、種類や品質が契約内容に適合している商品で返品を認めない場合、その旨を広告に明示する。「商品に欠陥がある場合を除き、返品には応じません」などと表示し、返品を受け付けないことを明確にする。

(つづく)

【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】