改正・機能性表示食品制度が本格始動~改正のポイントとは?(後編)

紅麹問題を受けて、消費者庁は機能性表示食品制度を改正し、2024年9月1日に、健康被害情報の収集・提供の義務化などを先行して施行した。第2弾として2025年4月1日に、(1)新規成分による届出への対応、(2)届出者による自主点検・評価と報告、(3)「PRISMA声明2020」への準拠――などが施行された。

ガイドラインの告示化、2025年4月1日施行

2025年4月の改正では、従来の届出ガイドラインの大部分を告示化した。これまで機能性表示食品制度の骨格は、食品表示法に基づく食品表示基準で定め、詳細を届出ガイドラインで規定していた。

前編でも言及したが、届出ガイドラインには法的拘束力がなかったため、届出資料に問題が見つかったとしても、消費者庁は強制的に排除できずにいた。しかし、2025年4月1日からは、告示化により、法令に基づいて制度全般を運用するようになった。

新規成分による届出は慎重にチェック

紅麹問題によって、機能性表示食品の安全性がクローズアップされた。特定保健用食品(トクホ)の場合、トクホの関与成分として使用されたことがない新規成分については、食品安全委員会の評価を受けなければならず、一定レベルの安全性が確保されてきた。一方、機能性表示食品にはそうしたルールはなく、事業者責任で安全性を評価する。そうした基本ルールは改正後も同じだが、新規成分については従来よりも慎重にチェックすることとした。

新規成分への対応は、機能性表示食品で過去に使用実績のない成分(機能性関与成分)を用いた場合が対象となる。専門的な知識が必要となるため、消費者庁は専門家に意見を求める仕組みを導入した。

専門家に意見を求める主な内容は、機能性関与成分と医薬品の相互作用、機能性関与成分同士の相互作用など。特に医薬品との相互作用は、服薬中の患者にとって生命に関わる問題となる。そこで、消費者庁は専門家の意見を基に、容器包装上の注意喚起表示が十分かどうかを吟味する。

この手続きには時間を要することから、新規成分の場合は通常の「販売60営業日前」の届出ではなく、「販売120営業日前」の届出とする。

いわゆる更新制を導入


届出者による自主点検・評価と報告も、制度改正の重要施策の1つ。いわゆる更新制の導入に該当する。

従来の制度では、いったん届出が受理されれば、深刻な疑義が生じない限り、機能性表示食品として売り続けることが可能だった。しかし、改正により、すべての届出者は年に1度、各要件の順守状況などを自主的に点検・評価し、その結果を消費者庁へ報告することが必須となった。これを怠ると、機能性表示食品として販売できなくなる。

自主点検・評価と報告の対象は、「届出事項」と「順守事項」。順守事項には、サプリメントのGMP管理、健康被害情報の収集・報告、安全性・機能性の新たな知見が得られた場合の報告などがある。

ルール違反の届出をはじめ、届出者の廃業や事業撤退などの理由で放置されてきた届出が、消費者庁の届出データベースから排除されることになる。

PRISMA声明2020への準拠が必須


PRISMA声明2020への準拠は、科学的根拠のレベルアップを狙った措置。PRISMA声明とは、研究論文を収集して機能性を総合判断する手法の「研究レビュー(システマティックレビュー)」を適正に実施・報告するための国際指針。機能性表示食品の届出の約95%が、研究レビューによるものとなっている。

機能性表示食品制度の発足以降、PRISMA声明2009に準拠してきたが、2009年版を改善してアップデートした2020版が登場。これを踏まえて、2025年4月1日以降の届出を対象に、PRISMA声明2020への準拠を必須とした。一方、それ以前の届出については、早期に2020版へ準拠するよう求めることにとどめた。

また、届出資料について、届出者が作成する資料と、研究レビューの実施者(研究機関や原料メーカーなど)が作成する資料を明確に区分した。届出者が都合の良い表示内容とするために、研究レビューに関する記述を変更できないようにした。

例えば、研究レビューに「1回30分以上の運動を週に2回以上行う40~60歳の健康な成人を対象に…」と記載されている場合、適切な表示内容は「運動習慣のある中高年の…が報告されている」となる。しかし、もっと幅広い層に販売するために届出者が勝手に、研究レビューを「40~60歳の健康な成人を対象に…」、表示内容を「中高年の…が報告されている」などに変更するケースが後を絶たなかった。作成する資料の区分は、こうした“インチキ”を一掃するのが狙いだ。

前編・後編を通して主な改正点を見てきたが、その項目は多岐にわたる。新たなルールが十分に順守されれば、制度に対する信頼が向上するとみられる。ただし、機能性表示食品制度に対する批判は依然として根強く、引き続き、制度の改善によるレベルアップが求められそうだ。

(了)

【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】