改正・機能性表示食品制度が本格始動~改正のポイントとは?(前編)

2024年3月に発覚した紅麹問題は、機能性表示食品制度の大幅改正へとつながった。改正・機能性表示食品制度は2024年9月1日と2025年4月1日の2段階に分けて施行された。これと合わせて、消費者庁の届出データベースも改修された。紅麹問題を踏まえ、同制度はどのように改正されたのか。前編で2024年9月1日に施行された施策、後編では2025年4月1日に施行された施策を解説する。

ガイドラインによる運用から法令に基づく運用へ

機能性表示食品制度は届出制を採用し、これまで法的根拠のないガイドラインに基づいて運用されてきた。このため、安全性や機能性の科学的根拠に問題が見つかったとしても、強制的に排除することは困難だった。そうした積み重ねが、同制度に疑問符が付く状況を生んだ。そして、紅麹問題で一気に信頼が揺らぐ形となった。

そこで今回の改正では、届出制を維持するものの、消費者庁は従来のガイドラインによる制度運用を取りやめ、法令に基づく運用へと舵を切った。

その第1弾として、2024年9月1日に、(1)健康被害情報の収集・提供の義務化、(2)GMP(適正製造規範)による製造管理の要件化、(3)容器包装の表示方法の見直し――を施行した。

健康被害情報の収集・提供を義務づけ

このうち、健康被害情報の収集・提供の義務化は即日施行となった。届出者に対し、健康被害情報を収集し、被害の発生や拡大の恐れがある情報を得た場合には、速やかに保健所(厚労省が所管)へ提出することを義務づけた。同時に、消費者庁への報告も義務づけた。

厚労省への報告は、被害の拡大防止が目的。一方、消費者庁への報告は、届出者の順守状況の確認が目的となる。

報告する情報は、医師が診断して製品との因果関係が否定できないものや、不明なもの。具体的には、同じ製品で症状のカテゴリー(かゆみ、下痢など)が同じで、1カ月ほどの期間内に複数の情報を得たケースとしている。ただし、摂取者が死亡したという情報や、医師が重篤と診断した情報などは、たとえ1例であっても報告しなければならない。

報告が求められる期限は、届出者が、診断した医療機関名を把握した日から「15日以内」としている。

届出者がこれらを順守しない場合は、両省庁がそれぞれ対応する。厚労省は食品衛生法によって営業の禁止・停止を命令できる。消費者庁は食品表示法に基づいて、製品に機能性を表示しないように指示・命令ができる(機能性表示食品として販売できない)。

GMP管理を要件化、約350施設へ立入検査

GMPによる製造管理の要件化については、2年間の経過措置期間を設けた。2026年9月1日から完全施行となる。それまでに、届出者は対応を済ませる必要がある。

GMPによる製造管理を義務づけるのは、サプリメント形状の製品。消費者庁は食品表示基準を改正し、錠剤・カプセル剤・粉末剤・液剤などの加工食品をサプリメントと定義づけ、通知で詳細を示した。また、GMPの基準は告示で定めた。

実施状況を確認するため、消費者庁は2025年度から工場への立入検査を行う。実働部隊として、トップシニアアドバイザーと専門監視委員から成る9人の体制を整えた。サプリメント形状の機能性表示食品を製造する約350施設を対象に、立入検査を行う予定だ。

当面は確認・啓発を目的とし、2026年9月からは監視・指導を本格化させるとみられている。

研究レビューの届出、切り取り表示を禁止

容器包装の表示方法の見直しについても経過措置期間を設け、2026年9月1日から完全施行となる。

表示方法の見直しは多数の表示項目で行われる。このうち、届出者が特に注意しなければならないのが、機能性の表示方法だ。

機能性表示食品の機能性を評価する方法として、最終製品を用いたヒト試験と研究レビューがある。研究レビューは研究論文を幅広く収集し、総合的に判断する手法。届出の95%を研究レビューによるものが占める。

研究レビューによる届出の場合、本来ならば「〇〇(成分名)には□□する機能があることが報告されています」と表示しなければならないが、現状を見ると、「体脂肪を減らす」「ストレスを軽減」などと一部を切り取った表示が横行している。

しかし、改正によって2026年9月以降は、「本品には〇〇(成分名)が含まれます。〇〇には□□する機能があることが報告されています」などと表示することが必須となる。

また、容器包装の主要面(表面)の上部に、「機能性表示食品」と表示するとともに、その近くに「届出番号」を記載することもルール化された。

(後編に続く)

【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】