台湾人と結婚する前に必見!台湾の「共同親権」とは

台湾でよくあるやり方ー共同親権と主たる養育者を決めるー
共同親権とは,父親及び母親の両方が子供に対する親権を持つことをいいます。
日本では、2026年5月までに改正民法が施行され、これまで認められていなかった離婚後の共同親権が認められるようになる予定です。
これに対し,台湾では、従来より「共同親権」が認められてきており、協議離婚・裁判離婚いずれでも「共同親権」とされることがよくあります。夫婦が大きく対立しているような離婚事件では双方が単独親権を主張することもありますが,その場合でも台湾の裁判所は「共同親権」を認めると共に「主たる養育者」を決めるということがよくあります。
共同親権が認められれば,子供に関する重大な事項,例えば海外移住,海外留学,緊急性の無い侵襲的治療などは「共同親権」者である両親と共に決める一方,子供の住所,学籍,財産管理,パスポートの保管など日常生活なことは主たる養育者である親一人で決めることが可能です。
以下,台湾の裁判所がどのようにして親権者を決めるか簡単にご紹介します。

親権は基本的に子供の最善の利益

一言でいうと,親権を誰に帰属させるかは「子供の最善の利益」で判断します。基本的には,主たる養育者優先,監護の継続性,乳幼児母性優先,子の意思尊重,兄弟姉妹不分離,面会交流の寛容性,育児サポートしてくれる家族がいるかどうかにより判断します。概ね日本と同じですが,違うのは「子の意思尊重の原則」と「育児サポートしてくれる家族がいるかどうか」です。

子の意思尊重は7歳から
台湾の法律によると,子供が7歳以上の場合は,家庭裁判所が親権者や監護者の指定の裁判をする際に,子供の陳述を聞かなければなりません。しかし,子供は監護の状況や見通し等によって,本心とは異なる意見を述べることが少なくありません(片親疎外,台湾では親子離間といいます)。

育児をサポートしてくれる家族がいることも大事
日本の文化と違い,「結婚は二人の話ではなく,両家族の話だ」という考えが多数派です。単独親権者や主たる養育者になった時,育児に協力してくれる家族がいるとよいとされ,親権を判断する際に,家族支援があるかどうかも判断基準になります。

子供にプレッシャーをかけないようにー社会福祉士に協力!

現在,「子供を法廷に立たせ,裁判官に対して自分の意見を言わせる」のは,子供にプレッシャーを与えるとされているため,できる限り行わない裁判官が増えてきています。
その代わりに,裁判官は民間事業者に委託し,所属する社会福祉士が,子供と両親それぞれと面談し,「調査報告書」を裁判所に提出します。

判断が難しいなら,家事調査官や手続補佐人に再調査を任せる!
社会福祉士は父母それぞれの言い分を聞き,彼らが親権を行使する能力があるかどうかを確認し,その意見をまとめて調査報告書を作成します。父母が別居の場合は,別々の社会福祉士に任せることになり,父母二人ともに親権者になれるという結果が出る可能性が高いです。

その際,裁判所が家事調査官や手続補佐人(台湾では程序監理人という)を選任し,再び調査することになります。手続補佐人は社会福祉専門,法律専門,心理専門の三つの種類があります。自分の経験によりますと,片親疎外の疑いがある子供に対しては,心理専門の手続補佐人を選任した方が良いでしょう。

準拠法・裁判管轄について

ここまで台湾の「共同親権」についてご説明しましたが,日台をまたぐ離婚問題については,そもそもどの国の法律が適用されるのかも検討しておかないといけません(「準拠法」といいます)。台湾では,日本と同様,協議や起訴時点での,夫婦二人の:①共同国籍の法律,②常日頃居住している国の法律,③最も密接な関係がある地の法という順番で適用される法律が決まる一方,親子間の法律関係は子の本国法によるとされています。
また,日台どちらの法律が適用されるかという問題と,どちらの国の裁判所に管轄が認められるのか(「国際的裁判管轄権」といいます。)という問題とは厳密には別問題なので,どちらの国の裁判所に管轄権が認められるかの検討も必要です。基本的には被告人(訴えられた方)の住所地がある国の裁判所に管轄権が認められるのですが,台湾の裁判所では,一見台湾に管轄権があるような場合でも,被告人が応訴不便,子が台湾に暮らしていないので調査不便,子の最善の利益等を理由にして,管轄権を認めないこともあります。
ですので,事前に準拠法・管轄権を確認することは必須です。

おわりに

結婚する前に離婚について考えるのは縁起が悪いと思われるかもしれませんが,「知識を揃えたら損はない」と毎回事件を受けるたびに思います。

【文責・林香均(台湾律師)】