不正と内部統制の関係~強固な組織作りのために~
1不正発生の要素
2008年4月、日本版内部統制監査制度(いわゆるJ-SOX)の導入により財務報告に係る内部統制の整備・運用及び内部統制の実施が上場企業には義務付けられ、企業の内部統制に関する公認会計士による内部統制監査の実施が始まりました。
J-SOX導入当初では不正発生件数は一旦減少しましたが、その後も「不適切な会計処理」を原因とした訂正報告書(上場企業が過去に財務局及び金融庁に提出した有価証券報告書等の訂正版)の提出件数は依然として減少していません。
それでは、なぜ不正は発生するのでしょうか。
不正は発生要因を分解すると①動機、②正当化、③機会の3つが揃うと発生すると考えられます。
「人の内面的な要素(①動機、②正当化)」に「組織の脆弱さ=内部統制の弱さ」が加わると不正を起こす③機会を提供することになると考えることができます。
不正を実行する局面における「人の内面的な要素」とは、例えば①営業目標の達成をプレッシャーとして認識する、または自身の経済的欲求の充足という「動機」が働くこと、②会社の営業目標達成のために仕方ない、または自身の評価が低く給与が低いため自身はもっと高く評価されるべきという自身を「正当化」する心理が働くことを意味します。
「人の内面的な要素」は人の心の中の問題であり組織が制御することは困難でありますが、「内部統制」を有効に整備・運用し組織を強くすることで不正の「機会」を組織自ら防止することが可能となります。
不正が発覚した場合、組織にとっては取り返しがつかない状況になることは過去の事例(カネボウ、東芝等)を振り返っても容易に想像がつきます。
不正を防止・早期発見するには内部統制を構築し、組織を強くすることが重要となります。
2不正を防止・早期発見するには
それでは、不正を防止・早期発見するために組織はどのように対応するべきでしょうか。
色々な対応方法はありますが、主要な方法をご紹介します。
(1)不正に対する経営者の考え方・姿勢を整える
経営者が業績達成を最優先事項としていると不正を防止するための内部統制構築は後回しとなる傾向にあります。
経営者が短期的な利益を追求するあまり、少人数で経理業務の負担を強いたり、内部監査部門に十分な人員を配置しないことにより、何年も不正が発見されず最終的に組織の存続が危ぶまれる事例は多くあります。
資金繰り等の問題により十分な人材が確保できない場合には、外部人員の利用やシステムによる自動チェックが効くような体制の構築を検討する必要があります。
(2)不正対応のための内部統制を構築する
現金や在庫等の現物管理、入出金管理、仕訳記帳及び承認手続の業務分掌による相互牽制機能を確立し、内部監査部門による当該相互牽制機能をチェックする体制を構築する必要があります。
(3)支店・営業所、子会社の管理を徹底する
親会社・本社の目が届きにくい支店・営業所、子会社(特に海外子会社)での不正事例は過去にも多く発生しています。
親会社等の経理部門、内部監査部門が支店・営業所、子会社の業務フローを把握し内部統制構築と改善のための指導を行うことが重要になります。
特にM&Aで買収された会社は企業風土も異なり、また公認会計士による監査経験が無い会社であれば買収後のPMI(Post Merger Integration、M&Aの成立後に行われる統合プロセス)で経理人員補充や内部統制構築を早期に進めていく必要があります。
3最後に
不正行為は今後も無くなることはなく、気が付いたら巻き込まれている可能性もあります。
経営者には不正発生3要素のうちコントロール可能な「機会」を少なくし、不正の端緒を早い段階で見つけられる内部統制の仕組みを構築する社会的な責任があると思います。
本稿を読了された方へ内部統制構築=強固な組織作りに関するきっかけを与えることができれば幸いです。
【文責・新井優介(公認会計士/堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】