ネット通販の定期購入商法で新たな悪質手口
多数の消費者トラブルが発生しているインターネット通販の悪質な定期購入商法で、新たな手口が問題に浮上している。広告で1回限りの購入や縛りのない定期購入コースをうたいながら、申し込もうとすると、わかりにくい表示によって、定期購入契約に変更したり、縛りのある定期購入コースに変更したりするというものだ。消費者庁は2025年6月以降、そうした手法の取り締まりに乗り出している。
カウントダウンタイマーでクーポン利用を焦らせる
悪質な定期購入商法が横行していることを受けて、消費者庁は2022年6月に改正特定商取引法を施行し、新たな規制を導入。申し込み最終確認画面に、「分量」「価格」「商品の引渡時期」など6項目の表示を義務づけた。しかし、その後も消費者トラブルは沈静化する気配がない。その背景の1つに、新たな巧妙な手口の登場がある。主に次のような流れだ。
(1)広告では、1回限りの購入となる「単品購入」や、いつでも解約可能な「縛りのない定期購入コース」であると強調。消費者は広告を信じて申し込もうとする。
(2)注文ボタンを押して遷移した画面には、「クーポン」を使用するとさらに割引するという表示や、もっと得する「特別プラン」を用意しているという表示が出現。「クーポン利用はあと〇分で終了」や「この画面は一度閉じると二度と出てきません」とった説明もある。
(3)消費者は焦って「クーポン」を利用したり、「特別プラン」を選んだりして注文を完了させる。その結果、契約した内容は、単品購入ではなく定期購入コースとなっていた、または、複数回の購入が条件となる縛りのある定期購入コースとなっていた。
<事例1>クーポン利用→縛りのある定期購入コースに
こうした手口による消費者トラブルが増加していることから、行政も取り締まりに本腰を入れ始めた。消費者庁は2025年6月27日、ネット通販で美容液を販売するA社に対し、特商法違反により、6カ月間の業務停止命令を出したと発表した。
A社は販売サイトで、「〇回は絶対使ってといったよくある購入回数の縛りはなし!」と目立つように宣伝。「今すぐお得に申し込む!」と書かれたボタンを押すと遷移するページでは、「ご注文完了」「ご注文ありがとうございました」とともに、「10分間限定で今すぐ使える特典クーポンプレゼント」と表示していた。さらに、カウントダウンタイマーによって残り時間を表示し、特典クーポンの利用を焦らせていた。
しかし、特典クーポンを利用すると、4回の購入が条件の縛りのある定期購入コースに変更されるという仕組みだった。「ご注文内容の確認」には、4回の購入が必要となる旨を記載していたが、価格や分量などから離れた場合に小さな文字で表示していた。
特商法の改正後、消費者庁は申し込み最終確認画面の「分量」「価格」など6項目の表示事項の不備(第12条の6第1項)を理由に取り締まってきた。だが、A社に対しては、特定申し込みについて「人を誤認させるような表示」であったと認定した。これは、最終確認画面の表示事項(6項目)の欠落ではなく、申し込み時の表示が誤認を生むかどうかを判断したものだ。
<事例2>「1回限り」→申し込み画面は定期購入コース
これに続いて、消費者庁は2025年9月10日、ネット通販で美容クリームを販売するB社に対し、特商法違反により、6カ月間の業務停止命令を出したと発表した。
B社の手口を見ると、販売サイトでは「1回限り!」と強調。「最安値で申し込む!」と書かれたボタンを押すとチャットボットに遷移するが、このページは定期購入コースの申し込み画面となっていた。
申し込み最終確認画面には「初回:1,980円(税別)」などと表示し、消費者は1本のみを購入するつもりで申し込むが、実際には定期購入契約だった。
さらに、消費者庁は2025年11月6日にも、同様の手口を用いたC社にも、特商法違反により、6カ月間の業務停止命令を出したと発表した。
巧妙化する手口
改正特商法で義務づけられた申し込み最終確認画面への6項目の表示事項については記載するものの、今回の事例のように、申し込み時に消費者を誤認させて、自社にとって都合の良い契約に誘導する手口が流行している。
最終確認画面の表示事項の欠落に着目した取り締まりが続いたことを受けて、それを逆手に取った手法と言える。このような新たな悪質商法が次々と登場することから、法曹界や消費者団体からは、さらなる規制強化を求める声が強まっている。
(了)
【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】
