広告表現ルール入門(景品表示法・健康増進法 後編)

前編・中編では、景品表示法と健康増進法による健康食品の表示・広告の規制に関する考え方を解説した。後編では、事業者が注意しなければならない具体的な表示内容を確認する。

以下に紹介する表現は、景品表示法の「優良誤認表示」、または健康増進法の「誇大表示」に該当する恐れがあるため、特に注意が必要となる。

(1)健康食品の摂取で得られる効果について

疾病の治療や予防を目的とした効果

事業者にとって最も注意が必要な表示の1つに、疾病の治療や予防を目的とした効果がある。

「がんを防ぐ」「高血圧症の人に」「生活習慣病を予防」「アレルギー症状を緩和」「花粉症に効果あり」「インフルエンザを予防する」など、疾病治療・予防の効果があると思わせる表現はNGとなる。

身体の組織機能の一般的な増強・増進を目的とする効果

身体の組織機能の増強・増進を目的とする効果として、代表的なものに「疲労回復」「強壮」「体力増強」「食欲増進」などがある。

女性向けサプリメントの広告では、「老化防止」「アンチエイジング」といった表現も散見される。このほか、「新陳代謝を促進」「免疫機能の向上」「治癒力を増強する」「集中力を高める」「脂肪燃焼を促進」といった表現も該当する。

特定の保健の用途に適する旨の効果

特定の保健の用途に適する旨の効果には、「おなかの調子を整える」「コレステロールの吸収を抑える」「食後の血中中性脂肪の上昇を抑える」「骨密度を高める働きのある〇〇(成分名)を含んでおり、骨の健康が気になる方に適する」などがある。

これらは、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品に限って認められる表現であり、一般的な健康食品では用いることができない。

栄養成分の効果

栄養成分の効果とは、「鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素です」「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」「ビタミンB12は、赤血球の形成を助ける栄養素です」などを指す。

これらの表現は、栄養機能食品の場合に一定の条件の下で使用できる。しかし、機能性表示食品や一般的な健康食品では、ビタミン・ミネラルといった栄養成分の機能をうたうことはできない。

身体を美化して魅力を増す、容貌を変える、皮膚・毛髪を健やかに保つ効果

健康食品の広告で目立つのが、美容に関する大げさな宣伝。「美肌を得られる」「美白効果がある」といった宣伝文句も見られるが、そうした表現はNGとなる。

また、「皮膚に潤いを与える」「理想の体形が得られる」といった表現も法令違反に問われる恐れがある。特に、著しい痩身効果をうたって行政処分を受けるケースが後を絶たない。

(2)暗示的・間接的な表現について

名称やキャッチフレーズによる表示

「デトックス〇〇」「延命〇〇」「スリム〇〇」「減脂〇〇」といった商品名をつけたり、「血液サラサラ」「体に溜まった余計なものをスッキリ」といったキャッチフレーズをつけたりすることは、暗示的・間接的な表現に該当し、法令違反に問われる恐れがある。

「〇〇活」という表現

近年、健康食品の広告で「〇〇活」という表現が流行っているが、その内容によっては法令に抵触する恐れがある。特に注意しなければならないものに、「妊活」「腸活」などがある。

含有成分の表示・説明による表示

直接的に商品による効果をうたわずに、配合成分の効果を説明した広告も多い。そうした間接的な説明も、法令違反に問われる恐れがある。

「血圧を下げることで知られる〇〇(成分名)を配合」「〇〇(成分名)は不飽和脂肪酸の1種で、血液をサラサラにする」といった説明はNGとなる。

身体の組織機能に関する不安・悩みの問題を例示

「こんなお悩みありませんか?」と目立つように表示し、その下に「疲れが取れない」「集中できない」「ぐっすり眠れない」「運動や食事制限が苦手」といった複数の悩みや不安を列挙する広告手法は、多くの事業者が採用している。

しかし、販売商品を摂取して、これらの悩み・不安が解消できない場合には、法令違反に問われる恐れがある。

新聞記事、医師の談話、体験談

利用者の体験談も注意が必要となる。「1カ月摂取を続けたら体重が5㎏減った」「これまで取れなかった疲れがなくなり、すっきり」といった個人の体験談も広告に該当し、広告主の責任が問われる。

また、研究成果を報じた新聞記事の引用や、大学教授の「マウスを使った実験で発がんを抑制する効果が認められた」といった談話も広告に該当し、その内容によっては法令に抵触する恐れがある。

(3)保健機能食品について

特定保健用食品(トクホ)

国が許可するトクホであっても、行き過ぎた効果などをうたうと違法に問われる。トクホは国が許可した範囲で表示しなければならないが、それを超えた表現はNGとなる。

例えば、許可表示が「本品は、食後の血中中性脂肪の上昇を抑える〇〇を含んでおり、脂肪の多い食事を取りがちな人の食生活改善に役立ちます」であるのに、「体脂肪を減らす」と表示すると問題となる。

機能性表示食品

機能性表示食品制度は国への届出制を採用。事業者は、国へ届け出た表示の範囲内で表示・広告を行わなければならない。

このため、届出表示が「本品には〇〇(機能性関与成分)が含まれます。〇〇には、コレステロールを低下させる機能があることが報告されています」であるのに、「コレステロールを下げる」と表示して商品自体に機能性があるかのように思わせることはNGとなる。

取り締まり状況を見ると、届出表示の範囲を逸脱して、行政処分を受けるケースが増えている。

栄養機能食品

栄養機能食品については、国があらかじめ、対象成分(主にビタミン・ミネラル)、成分配合量の範囲、表示可能な文言を用意し、事業者が任意で表示する。

制度の対象でない成分の機能を表示したり、あらかじめ定められた表示内容を変更したりすると問題となる。定められた配合量の範囲を逸脱する量の成分が含まれている場合も、法令違反に問われる恐れがある。

行政処分を受けた事業者には大きなダメージ

景品表示法や健康増進法がカバーする表示内容は広く、今回紹介した事例以外でも問題となり、行政処分を受けるケースがある。近年では「ナンバーワン表示」も問題視されている。

行政処分を受けると、事業者名や商品名などが公表され、各メディアによって一斉に報道される。事業者が受けるダメージは大きく、社会的な信頼を損なう。そうした事態を避けるとともに、消費者が適切に商品を選択できるように、健康食品の販売会社には、法令を理解して適切な表示・広告を心がけることが求められる。
(了)

【文責・木村祐作(堤半蔵門法律事務所顧問) 監修・堤世浩(堤半蔵門法律事務所代表弁護士)】